遺灰は自然に お墓は心に 広がる多様な埋葬
多くの人が墓参りをするお盆を迎えた。近年は墓地に埋葬するのではなく、遺骨を細かく砕いて海や山にまく「自然葬」も広がっている。「樹木葬」や「宇宙葬」などいろいろある。背景には、お墓を建てても参ってくれる親族が近くにいなかったり、故人が生前に好んでいた場所に葬ろうという価値観が浸透してきたりといった事情があるようだ。
●樹木葬、宇宙葬…「故人の遺志尊重」浸透、環境にも配慮
樹木葬を行う山を見回る「樹人千年の会」代表の原寛さん。桜やイチョウなどが2メートルほどの間隔で植えられている=福岡市東区 タイサンボクや桜、ハナミズキ、モクレン…。福岡市東区の原土井病院の近くにある山の一画では、故人の遺灰をまいた場所に記念の木を植える「樹木葬」の取り組みが進められている。
2004年に同病院の原寛(ひろし)理事長が「樹人(じゅじん)千年の会」を結成してから、植えられた木は百数十本に上る。原さんは「樹木葬を希望する人は、死んだ後にも再び新しい命の源になろうという考え方に賛同してくれている。墓を建て続ければ、どんどん山を切り開かなければならない。環境にも配慮した取り組みです」と話す。
自然葬を推進する特定非営利活動法人(NPO法人)「葬送の自由をすすめる会」(本部東京)は1991年以降、全国で2579人の自然葬を営んだ。このうち九州では、玄界灘や阿蘇などで70人を葬った。
会の福岡県志摩町の女性(75)は7年前、大学教員だった夫の遺灰を博多湾に散骨した。夫の教え子約20人とクルーズ船に乗り、銅鑼(どら)を鳴らしながら、添えた花と一緒に遺灰が海に消えていくのを見送った。
女性は夫の死後、遺骨を寺院の納骨堂に預けていたが、「死んだら無になりたいね」と話していた夫の希望をかなえようと十三回忌に合わせて散骨を決めたのだった。「形はなくてもお墓は私の心にあります。夫も、好きだった海で自由になれて喜んでいるでしょう」。女性は海を見るたびに夫を思い出し、自身も海にかえることを願っているという。
福岡市博多区の市民団体「自然葬・散骨の会」では、山や海への自然葬だけではなく、ヘリコプターを使った空からの散骨や、少量の遺骨を入れられるペンダントなどの商品開発も行う。まだ申し込みはないが、カプセルに入れた遺骨を米国のロケットに乗せて宇宙にまく宇宙葬の予約も受け付けているとか。
日本では自然葬を認める法律はなく、墓地埋葬法は墓地以外への埋葬を禁じているが、法務省と厚生省(当時)は91年、散骨について「節度をもって行われる限り違法ではない」との見解を示している。
=2009/08/14付 西日本新聞夕刊=



コメント