お墓:上 より多彩に自分映す



お墓を自分らしさの表現の場としてとらえる人が増えています。新しいタイプも目につくようになりました。生き方のように、住まいのように、墓も多様化が進んでいるようです。

墓と言えば、石が3段に積まれ最上段の長方形の石に家名が刻まれている。そんなイメージを持つ人が多いだろう。主に長男に引き継がれ代々の遺骨を納める「家墓」と呼ばれる。約9割がこの形式とみられる。

家墓の場合、必要となるのが墓を引き継ぎ、管理する役目の承継者だ。故人の指定か、それがなければ地域的な慣習(長男、配偶者など)に従う。はっきりしない時には家庭裁判所が決めることもある。

しかし核家族化や少子化が進み、「子供がいない」「一人っ子同士の結婚」などで承継者のなり手がいないということが増えている。家墓が登場したのは、明治期の家制度の導入以降、大正から昭和にかけてと言われる。承継者不足はまだ新しい問題だ。

夫婦の家の墓を一つにした「両家墓」は両家で分担し、負担を軽くする目的で生まれた新しい形式だ。また、一代限りの「夫婦墓」や「個人墓」もあるが、いずれも管理する人が必要で承継者の問題は残る。

全日本墓園協会の横田睦主任研究員は「家族の形態や社会情勢の変化に伴って墓に対するニーズが広がり選択肢も増えた。だが、管理は結局残る人に依存するしかない。親族など周囲まで巻き込んだ話し合いが必要だ」と指摘する。

「子がいない」「面倒をかけたくない」という場合には、寺や霊園が管理する「永代供養墓」がある。定義があいまいな部分もあるが、「合祀(ごうし)墓」「合葬墓」もその一種。家族や夫婦で入ったり、親しい人同士や身寄りのない人同士で入ったりという形式もある。

契約年数が過ぎると、他人の骨とまとめられての供養に切り替わる場合が多い。一般的に個別の墓を建てるより安くて済む。

墓石の変化も著しい。「和型」に迫る勢いで増えているのが「洋型」。洋型の場合は家墓でも家名ではなく「愛」「和」「ありがとう」など、好きな文字や言葉を刻む人もいる。

「デザイン型」は乗り物や楽器、将棋盤など趣味や仕事に関する個性的な形が多く、自宅の居間を再現した例もある。費用は通常の約2割増が目安だという。

墓石業者でつくる全国優良石材店の会(お墓相談室0120-141-996)の吉田剛会長は「形が変わっても大事なのは供養する気持ち。ただ、個性的な墓は故人の生き方や思いが伝わりやすく、墓前のコミュニケーションにも役立つ」と言う。

費用は住宅と同様、墓地の種類や地域、広さ、石材などによって幅がある。永代使用料は売買できず、通常は権利を返上しても返還されないので注意したい。

墓を建てる時期に法律的な決まりはない。人生最後の高価な買い物になる可能性もある。慌てずに、供養してもらう側もする側も納得して購入したい。

人生のエンディング:1へ

私の場合
お墓がなくても
父が亡くなり、お墓のない我が家は納骨をどうするかで悩み、お寺に相談した。すると「骨は仏壇の中でいいですよ」と言われ、聞いたこともない話だったので驚いた。でも、無縁仏になるより毎日仏壇に手を合わせてもらい、世話をしてもらえる仏様の方が幸せだという話に納得した。誰も世話ができなくなったら本山に納骨するということで、今も毎日、父はみんなと一緒にいます。遠くて誰も来てくれないお墓を持つより、こういう方法の方がいいのでは、と感謝している。

(千葉県柏市 主婦 58歳)

一緒に入りましょうね
病気になる以前に「先祖代々の墓に入らず、夫婦の墓をつくる」と言っていた夫。「みんな、おやすみ」と最期の言葉を残し、深い眠りについた。家族のために一生懸命働いてきた夫に1人で墓に入ってもらうには忍びなく、仏壇に遺骨を安置し安らかに眠ってもらっている。「この家で一緒に暮らしてください。私がお父さんのそばに行った時、一緒にお墓に入りましょうね」と、朝夕お経を唱え、夫に語りかけている。いつもそばにいて家を守り続けてくれると思うだけで少し心が癒やされる。

(兵庫県豊岡市 森垣朋子 53歳)

2008年12月12日 朝日新聞





▲このページの先頭に戻る