葬儀・供養ビジネス多様 時代即し弔い個性化



 遺体を棺に納める「納棺師」を描いた映画「おくりびと」がヒットする中、葬儀や供養など人の死にまつわるビジネスが注目されている。従来の慣習に縛られない“個性化”が進む弔い方。それに伴い、サービス競争の激しさも増している。 (経済部・矢野修平)

 名古屋市中区の万松寺は来年2月、最新式の納骨堂「水晶殿」を開設する。壁面に納骨箱のケース約2000個が並び、表面は水晶で装飾。発光ダイオード(LED)の青色などに輝く。出入りには個人認証機能内蔵のICカードを用意して安全性にも配慮した。暗いイメージを一新し、他の納骨堂と差別化するのが狙いだ。

 場所によって52万5000-210万円(33回忌までの供養込み)の価格で、今月14日から販売を開始。夫に先立たれ、嫁いだ一人娘に墓の管理を押しつけられないという女性などから既に数件の予約がある。

 大藤元裕住職(50)は「熟年離婚で夫の墓に入れない人、母子家庭で墓がない人、死後に子に面倒をかけたくない人など多様なニーズに応えたい」と話す。

 墓地離れの動きに合わせ、仮想の墓をインターネット上に建てる「ネットお墓参り」も登場。葬送業務などを行う「アイキャン」(東京)は6年前からこのサービスを始め、現在は全国で約500人が登録している。

 画面の中央に墓石、左にひしゃくや花などの絵を表示。線香をクリックして墓まで持ってくると煙も上がる。遺影や没年などが公開でき、友人らがコメントも書き込めるようになっている。

ネットお墓参りのサンプル画面


 「親より先に子を土に返すのは忍びないという妻の意向と友人たちに弔ってもらいたい思いを両立させた」。愛知県蟹江町の僧侶安井興紹さん(60)は3年前、14歳で他界した長男の墓をネット上に建てた。「故人を思う心が大切。ネットの違和感はない」と話し、毎日、画面を開いて息子に語りかけている。

 本物の墓でも、掃除や墓参りを請け負う仕事が出てきた。2年前に葬儀会社を辞め、夫と墓管理の代行業「やすらぎ」を設立した愛知県豊川市の舟橋茂子さん(32)は、三河地方で墓を掃除する。墓参り代行とのセットで9980円で、墓地までいけなくなった高齢者や田舎の目を心配して依頼する主婦層の利用が目立つ。

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 「ぼくが葬儀屋さんになった理由」などの著書がある葬儀会館運営のティア(名古屋市北区)の冨安徳久社長は「故人や遺族の個性を反映した弔い方が増えている」と近年の動向を説明。自宅葬は減り、親類や知人だけの小規模な会館葬で、形式は簡略化、自由化の傾向にあるという。

 高齢化が進む中で成長が見込まれる葬儀業界。冨安社長は「時代に即した多様なメニューを打ち出すサービス業としての側面が強くなる」と今後を語る。

 【葬儀市場の動向】 国立社会保障・人口問題研究所の推計によると、年間の国内死亡者数は2040年まで年々増加。08年の114万人に対し、40年は166万人と推定している。これに伴い、市場規模も拡大が見込まれている。業者は一般企業や互助会など5000前後とみられるが、農協や生協など異業種から参入しやすく、競争の激化が予想されている。

2008年11月22日 中日新聞





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