2007年11月22日 家族が争わない、遺産の残し方とは?



 家族のあり方が変わるにつれ、相続でもめるケースが増えている。残す側、相続する側は、どんな準備をしておけば良いのだろう。

 曽根恵子さんは元々、不動産の賃貸管理や有効利用などを任される立場だったが、相続関係の相談が増え、7年前から相続コーディネーター業を営む。今では、年間3000件以上の相談を受けて的確なアドバイスを送る「遺産相続のプロ」。そんな曽根さんに「家族が争わない、遺産の残し方」を聞いた。遺産相続のトラブルは、残す人の意思がはっきりと見えなかった場合に起こるという。


―― 「遺産分割」でもめるケースが増えてきているようですね。

曽根 はい。最近は「遺産分割協議」に関する相談が当センターで最も多いです。相続する側に生活の余裕のない方が多く、不動産よりも現金をすぐにもらいたいとはっきり言うケースが増えているのが、遺産分割でもめる一因です。

 実家を残すという考えもなくなってきていて、その点も以前とは状況が違います。また、家族のあり方が変わってきていることも関係しています。家庭環境が複雑になり、離婚・再婚によって先妻の子と後妻の子がいる人、ライフスタイルの変化によって子供のいない人、独身者なども多くなっています。相続人が他人に近い場合もあり、そんな時は、相続人の間で遺産分割の話し合いがなかなかつきません。

―― 遺産を相続する場合、「自分の法定割合の権利は主張する」「もらえるものはもらう」という傾向が強まっているのでしょうか。

 曽根 そうですね。権利のことは皆さんよく知っていますし、「もらえるものはもらってしまいたい」と、権利を主張する風潮があります。法定割合の財産が欲しいと主張しても、それは、おかしいことではありません。しかし、権利ばかりを主張してもめ続けると、弁護士を伴って家裁で争うことになってしまいます。目に見える財産は勝ち取ることができても、それによって家族が断絶し、家族の輪、将来的な円満さが失われてしまい、普段のつき合いもできなくなります。

 結局、どこに価値を見いだすかが問題です。もめないことも財産と考え、今回は譲った方がいいですよとアドバイスすることもあります。財産を中心に考えたりモノの価値ばかり考えたりして、亡くなった方への感謝の言葉がないというケースは非常に残念ですね。

―― では、残す者はどのように心がければ、遺産分割のトラブルにならずに済むのでしょう。

曽根 まず、分割できない遺産がある場合が、一番のトラブルの種となっています。同居、共有名義、1軒で3世帯というようなケースです。こんな時、全員が権利の正当性を主張すると、そのまま住み続けることができなくなります。余計な争いを避けるためにも、争いの種を残さないためにも、まずは「分割できる資産」にしておくことが大切です。

―― せっかく建てたマイホームが、妻に残せないというケースもあると聞きます。

曽根 あなたが不慮の事故で亡くなった時、妻と、2人の同居していない息子がいて、マイホーム価値が6000万円で、預貯金や保険金がほとんどなかったとします。法定割合の権利は、妻が2分の1、息子2人が4分の1と4分の1です。その時、家計が逼迫している次男がすぐに現金で欲しいと言い出したら、そのマイホームを売って現金1500万円を捻出するしかないですし、残った妻は新しい家を探さなくてはなりません。
―― では、マイホームを妻に残すには、どうすればよいのですか。

曽根 妻にその家に住み続けてもらいたい場合は、先を見越した遺言状を書くことです。妻の生活を優先し、妻が亡くなるまで、その家は妻のものとし、妻の亡き後に処分をして売却金を長男と次男で2等分する、もしくは息子の1人が価値の半分を他方に支払って自分名義にするというように、2 次相続の分け方までを遺言で決めておくのです。一言、理由や気持ちも遺言状に記しておくとよいでしょう。例えば、「配偶者の生活を守るために、子供2人は納得してもらいたい」と。

 また、その次男に4分の1の現金を渡さざるを得ないという場合は、最低でも1500万円の保険金となるような生命保険に入っておくのです。そうすると、マイホームを売却することなく、法定分割の1500万円の現金を渡すことができます。ただ、人によっては、例えば夫婦がうまくいっていない場合は、妻には何も残さず全部子供に渡したいというケースもありますが…。

―― 相続コーディネーターという曽根さんの立場は、どの人にも肩入れしないことでしょうが、そんなことができるのでしょうか。

曽根 遺産を整理し、相続人の間でまず話し合ってもらって、全員の主張を聞き、そのうえで選択肢を用意します。弁護士さんであれば依頼人だけの味方になりますが、相続コーディネーターは、理想的には全員が納得するような選択肢を提示し、みなさんで話し合ってもらいます。本来の相続は、財産を引き継ぐことではなく、残った家族が幸せになること。そんな相続をお手伝いしたいと思っています。

―― 残された家族が、右往左往したりトラブルにならずに済むかどうかは、残す者の心がけと、家族・親族のコミュニケーションが取れているかどうかで決まるのですね。

曽根 残された家族がもめないためにできる生前対策は6つほどあります。財産が明快に整理されていて、その分割方法も納得できる道筋が用意されていれば、余計な争いにはなっていかないはずです。
●残された家族がもめないための生前対策

1. 持っている財産の確認・整理をする
2. 分けられる財産にしておく
3. 必要とされる分割金、納税資金を確保しておく
4. 遺産分割を決めて遺言にしておく
5. 節税対策をしておく
6. 専門家の知恵を借りる

曽根 遺産をどうするかについては、普段から意識しておいた方がいいし、夫婦でも話しておいた方がいいでしょう。あなたの持っているものをどうしたいかの意思をちょっと整理しておくだけで、残る者の間のトラブルは大きく減ります。やはり遺言として残しておくのが賢明です。

 相続の意思を残すのは義務です。いろいろなトラブルを見ていると、お金が一番大事と思っている親のトラブルを子供が見ていると、必ず将来、その子供も怖いくらいに親に似て、再びトラブルが起こります。良い残し方さえすれば、残る方々も守られるはずです。

出典元:NBonline(2007/11/17)





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