ネットで死者を弔う「オンライン記念館」(ITmediaNews)
墓地や葬式ではなく、オンラインの写真やメッセージで死者を悼むトレンドが、英国でも高まっている。若者が殺害される事件が多発していることがその理由の1つだ。
オンラインでの精子・卵子の売買、BeboやFacebook、MySpaceのようなソーシャルネットワーキングサービス(SNS)など、われわれは既にインターネットで何かを作り出したり、デートしたりしている。では、オンラインで「火葬」もすればいいのでは?
高齢者看護の訓練を受けた看護師マギー・キャンディさんは、自分は死に向き合う方法を知っていると思っていた。だが娘のステラさんが17歳で自殺したとき、彼女は弔問者名簿、見舞いの手紙、墓石などの大人の世界が時代遅れで、ステラさんの思い出を与えてくれるものがないことに気づいた。
結局、彼女はコンピュータに詳しい10代の息子と、インターネット、オンライン記念館といわゆる「デスネットワーキング」という新たな世界の力を借りて、ふさわしい追悼の場を作り上げた。
「ほとんどの若い人々にとって、インターネットは毎日使っているものであり、オンライン記念館は自然な進化だ」とキャンディさんはReutersに語った。
彼女の娘のバーチャル記念館は、英国の一部で最新の「e-trend」と呼ばれる現象の先駆けの1つだった。
彼女は今、www.alwaysberemembered.co.ukというWebサイトを運営し、そこで遺族が死者を記念する手段を提供している。ユーザーは写真や詩、捧げものを載せた記念ページを作り、誰でもそこを訪れて、コンテンツを追加できる。
若者の非業の死がきっかけに
オンライン聖堂は米国では数年前から人気だが、英国では最近人気が高まり始めたばかりだ。その理由の1つに、10代の若者の間で刃物や銃による死亡事件が多発していることがある。
「過去1年間に、世間で注目を集めた若者の刺殺や銃殺事件が幾つか起きた。それがわれわれのサイトを大きくした」と英国の大手オンライン記念館の1つGone Too Soon(www.gonetoosoon.co.uk)の管理者ニコラ・デービス氏は語る。
キャンディさんのサイトのように、Gone Too Soonは小規模な個人の記念サイトとして始まったが、2005年11月の開設以来、圧倒的なペースで成長した。現在は1万3000人を超える死者を記念し、毎日100件以上の追悼メッセージが寄せられているという。
創設者のテリー・ジョージ氏は、同サイトの有名人――ダイアナ妃やエルビス・プレスリーなどの記念ページがある――がオンラインユーザーを引き寄せているのは確かだが、無名の死者にも数千のメッセージが寄せられていると指摘する。
同氏は、同サイトの一番の魅力は、遺族が感情を開放できる点にあると確信している。
「よくサイトのメッセージを読んで、人々に共感している。かなり憂うつなことではあるが、人々が経験している苦痛を感じられる」(同氏)
「わたしが考えているのは、われわれのサイトがなかったら、彼らがほかにどこでこの苦痛や怒りや不満を開放できるだろうかということだ」
Gone Too Soonではほとんど毎日、3月にロンドン東部で刺されて置き去りにされ、亡くなったアダム・レジス君(17)の友人が「バーチャルキャンドル」をともす。
2月にロンドン南部の自宅の寝室で撃たれて亡くなった15歳のビリー・コックス君のページには、悲しみや怒りを表す新規メッセージが毎時間現れる。
8月18日に「lil' gangsta squeaky」が投稿したメッセージは、こうしたサイトが聖堂としてだけではなく、「デスネットワーキング」――ユーザーがギャング文化から自殺、死産まであらゆることを話し合う媒体――にもなりつつあることを示している。
「ぼくはビリー・コックス君を知らなかったけれど、ギャング団に入りたいと思っていた。そのとき、ビリー君が殺されたニュースをテレビで見て、人生は短すぎて、ギャングになったり、ドラッグや、銃やナイフや、そんなものにかかわっていられないことに気づいた」とこのメッセージには記されている。
環境にも効果
デービス氏は、FacebookやMySpaceなどのSNSで多くの時間を過ごす世代にとって、亡くなった友人をオンラインで追悼したり、祭ったりすることはきわめて自然だと語る。
「若い人は、この方が簡単に自分を表せると思っている。墓地へ行ったり、葬式に参列しなければならない場合、何と言っていいか分からないだろう。だが、インターネットではもっと自信を持って、安心して自分の感情を話せる」(同氏)
オンライン記念館は――おそらく意図したことではないだろうが――英国の環境保護派の注目も集めている。
地元メディアの報道によると、英国南部の町ウスクの自治体は、記念サイトを設置して、住民に埋葬地のさらなる有効活用を促したい考えだという。
墓石や記念像を禁じた自然墓地と、墓地や墓からの光景の写真を載せたオンライン聖堂を組み合わせることもあり得るだろう。
キャンディさんは、オンライン聖堂は間もなく墓地を過去のものにするかもしれないとまで予測している。
「オンライン記念館は環境にいい。英国は墓を作るスペースがなくなりつつある。いい場所も幾つかあるが、一般的に言って、墓地の隣に住みたい人はいないだろう」
「オンライン記念館なら、非公開にしたいときは非公開にできるが、いつでもそこにある。どこに行ってもオンラインにつなげば見られるという安心感がある」
出典元:ITmediaNews (2007/9/4)


