お墓の引っ越し「改葬」急増(東京新聞)
お墓の引っ越し「改葬」急増 自宅近くに移して墓参りの負担軽減
もうすぐお盆。遠い古里への墓参も、年を取るにつれ体力や経済面での負担が大きくなってくる。ならば、お墓(遺骨)に来てもらいましょうと、住まいの近くにお墓を引っ越す「改葬(かいそう)」を選ぶ人が、都会で増えている。
「あなた、きょうは天気がよくていいわね」。横浜市鶴見区の販売業、池田清子さん(62)は、夫の墓に話しかけながら水をかけた。
夫は6年前に急死し、京都府向日市にある実家の菩提(ぼだい)寺に埋葬されていた。3回忌までは京都で法要を営んだが、「2人の娘に将来の墓参りが負担にならないよう」改葬を決めたという。昨年10月、鶴見区内にある、曹洞宗の寺の墓地に遺骨を移し、今年4月の7回忌はここで供養することができた。菩提寺は浄土宗だったが、受け入れてくれた。寺はあっせん業者に紹介を受けた。
費用は約300万円。それでも、バス15分で停留所そば、という新しいお墓の便利さには代えがたい。池田さんは「京都は遠くてさびしかったと思う。ここなら月命日に会いに来られる」と、ほっとした様子で話す。
厚生労働省によると、全国の改葬件数は2004年度まで年7万件前後だったが、05年度は9万6千件超に増加した。
改葬は葬祭業者に依頼するのが一般的で、同じ宗派の墓地をあっせんされる。宗派が異なっても受け入れてくれる場合もある。墓石の業界団体「全国優良石材店の会」の加盟店調査によると、93%が「改葬が増えた」と答えている。
仏事全般を扱う「メモリアルアートの大野屋」でも、05年に120件だった改葬の問い合わせが、昨年は664件に増えた。同社の改葬セミナーには、昨年12月以降480組が訪れた。同社顧客の3割が、改葬の依頼だという。
改葬需要の高まりに目を付けた企業も現れた。長崎市の建設関連会社「ザ・システム」は、昨年12月に埼玉県熊谷市、今年2月には千葉県市川市に、改葬を前提とした納骨堂を開いた。仏教限定だが、2万円の事務経費程度で宗派は自由に改葬できる。
同社愛墓(あいぼ)事業部によると「子どもに墓参で迷惑をかけたくない」と、50-60代を中心に月50件の問い合わせがある。これまでに納骨したのは7件だが、首都圏で軌道に乗れば、10年後、提携寺院を全国で300に増やす計画だ。
改葬の形態には(1)墓石ごと全部(2)一族の遺骨すべて(3)個人の遺骨(4)分骨-の4パターンがあり、大半が(2)のケース。墓石も含めて改葬したい希望が多いが、区画が狭い、霊園の景観基準に合わないなどの理由で、移せない例がほとんどだという。
改葬には注意点もある。親せきへの事前説明は欠かせない。ほかに、事務手続きなどのため、新旧墓地のある役所や墓地管理者らとの手続きも必要だ。墓地を更地に戻す費用は改葬側の負担、指定石材店にしか頼めないことが多いなどの業界ルールもある。
費用は新旧墓地のランクや移転距離などにより変わるが、「新しくお墓を建てるより、100万円ほど多くかかる」(大野屋)という。
<一般的な改葬の流れ>
(1)新しい墓地と契約し、墓地使用許可証をもらう
(2)旧墓地管理者(お寺など)に事情を説明し、改葬の了解を得る
(3)旧墓地のある自治体から、改葬許可申請書を受け取る
(4)申請書に必要事項を記入し、旧墓地管理者から埋葬証明をもらう
(5)旧墓地のある自治体に申請書と移転先の墓地使用許可証を提出し、改葬許可証をもらう
(6)魂抜きなどの法要を行い、旧墓地から遺骨を取り出す
(7)新墓地に改葬許可証を提出し、納骨する
※自治体によって書類発行に時間がかかったり、手続きが異なったりする場合があるので確認を
出典元:東京新聞(2007/08/05)


